Mag-log in時は少し遡る。ここは東の大国。そして、上空から突然、北の大国本隊の魔導戦艦が50隻現れた場面に戻る。上空は朝方の筈なのに、その50隻の魔導戦艦によって空に浮かぶ雲の様に覆い尽くされる。世界が絶望の色に染まったかの様であった。「何で…北の大国には、グロードさんが居る筈なのに…。」上空を飛行する魔導戦艦を恐怖に満ちた目で見つめながら口を開くミーナ。「…グロードさんが…あり得ないよ。少なくとも、肉体的に何かあったとは考えられない。」「カイルの言う通りだ。あの人がやられる訳が無い。あるとすれば……」ネルでも持っていなかった情報。それは魔導戦艦の隠してある場所である。魔導戦艦の性能を知っていたネルは事前にその事を全員に伝えていたが、肝心の隠し場所まではネルでも把握しきれなかったのだ。当然といえば当然。軍事国家に限らずどの国でも兵器の国外流出は命取りとなる。その為、兵器はより見つかりにくい場所に隠しておきたいものだ。「グロードさんでも、奴らの兵器の隠し場所は見つけられなかったのか……分身の僕に告ぐ。魔導戦艦で、奴らに魔導砲・アステリアを放て。」ネルは先行部隊が乗っていた魔導戦艦を奪取した分身達に向け、無線機で命令した。すると、上空に飛行する1隻の魔導戦艦が50隻の魔導戦艦に向けて魔導砲・アステリアを放つ。しかし、放たれた魔導砲・アステリアは50隻の魔導戦艦に当たる事なく、霧散し消えていく。そう。本隊の魔導戦艦は全て無効魔力機構(アンチ魔力システム)が働いている為、魔力を凝縮した高出力のアステリアであってもそれらの攻撃を無効にする。攻撃を無効にするだけで、同じ様に魔導砲・アステリアは放つ事が出来る為、今度は本隊の魔導戦艦が同じ様に魔導砲・アステリアを放った。そしてネルが奪取した魔導戦艦は呆気なく破壊される。魔法が通じない上に、破壊力のある力を保有する。魔法社会においてこれ程脅威になる事はないだろう。正に、人という罪深き存在が生み出した負の産物である。「……こうなったら、僕がやるしか無いのか…。」「おい、待てよ!幾らネルでもあの数相手は無理だ!」「僕以外に誰がやるんだ?取り敢えず、擬似・ブラックホールで魔導砲を止める事は出来る筈だ。」「そんなのいつまでも保つ訳ねえだろ!?」「じゃあ、このまま黙って見てれば良いのかい!?」カイル
先行部隊が東の大国ノームの領空内に侵入する前に戻る。ここは北の大国よりも数千kmほど離れた地点。北の大国の先行部隊の魔導戦艦が東の大国へ攻め込む時期を見計らい、グロードはゆっくりと歩きながら進んでいた。[溢れ出る自噴の呪い]によって魔力が常に溢れ出てくるグロードは魔力を隠す事が出来ず、安易に近づけば北の大国にとってはそれだけで脅威となりうる。グロードが空間移動ですぐに北の大国に侵入しない理由は2つある。1つ目は、北の大国の中心都市部には高さ60mはある巨大な外壁が周囲を覆っており、その外壁には無効魔力機構(アンチ魔力システム)というものが働いている。無効魔力機構(アンチ魔力システム)とは、名前の通り魔法を無効にする力があり、空間移動などで外壁の内側に侵入する事を阻害する。魔法で無から作られた炎や雷など、魔力に満ちた攻撃は全て通らない。この外壁は他国から攻められても、中心都市部にある軍事施設の破壊や技術の流出を防ぐ為に作られた。その為、北の大国は今まで戦争によってここ何100年も危機的状況に陥った事がない。2つ目の理由。これはあくまで予想の範囲内である。先行部隊の魔導戦艦を空間移動で転移させた後、しばらくの間は本隊の魔導戦艦を空間移動させる事が出来ないのだと考えた。これは魔力のエネルギーでは無く、転移させる為のシステムの負荷量の問題だと考える。巨大な魔導戦艦を転移させるにはそれだけシステムに大きな負荷が掛かる。これは機械が許容範囲を超えた際に起こる過熱状態(オーバーヒート)に近い。それを冷却する時間を確保する為、先行部隊を送り込んだ後、本隊を送り込ませるのに時間が掛かるのだと、グロードとネルは考えた。もしグロードが最初から空間移動で北の大国の領域内に現れた場合、ベリエルが作戦を変えて本隊を先に空間移動させる可能性がある。そうなれば東の大国は終わりだ。本隊は先行部隊である特殊特攻部隊がそのまま50隻分攻めてくるのと同じ戦力だとネルは言っていた為、これだけでも圧倒的な力である事が分かる。だからこそ、グロードは慎重に足を運んだ。魔力で自分が見つからない様に。そしてしばらくするとネルから無線で連絡が来た。「グロードさん。北の魔導戦艦が現れました。2隻です。僕達の予想通り、奴らは先に先行部隊を送り込んできました。」「了解。じゃあ、
そして現在。アルバスはネルによって地上に叩き落とされ、クレーターの出来た地面の中心に仰向けで倒れていた。自分の過去を思い出しながら、上空を見つめている。ーー何故、自分はこれ程何も思わなくなったのか?過去を思い出してもその理由が理解出来ずにいたアルバス。今まで他人に言われた事が正解だと思い自分で考えて生きてこなかった。正解と不正解の基準も、全て上の立場の人に委ねた結果、自分の生き方の何が間違いなのかを見つける事が出来なかった。そして先程戦っていたネルが上空から空間移動で倒れたアルバスの前に転移して現れる。ネルはアルバスを見下ろしていた。「何してるの?立ち上がらないのかい?」抵抗の意思を全く示そうとしないアルバスにネルは聞いた。「……もう身体を動かせない。これ以上の抵抗は無意味。」北の大国の理念では「敗北よりも逃亡や降伏の方が恥ずべき行為」である為、アルバスの性格上動けるなら死ぬまで戦うだろう。しかし、そうしないのは彼の言う通り、本当に身体を動かせないからだろう。自分の身体的な状態を把握してるからこそ、無理な抵抗はしないのだ。「今僕に負けそうなのに、悔しく無いのかい?僕に対して、腹が立たないのかい?」ネルは更にアルバスに対して質問を続ける。「……」「答えなよ。どうせ今の君には何も出来ない。何も出来ないなら、せめて僕と話をしたらどうなんだ?」「もう一度、さっきの質問をするよ。君は、何の為に戦ってるんだい?」黙り込もうとするアルバスに問い掛け続けるネル。自分の敵になる人は容赦なく攻撃してきたネルであるが、何故かアルバスにだけ対話を求め続ける。何故なのか?「君の事を見てると、何も考えずに人を殺して自分を満たそうとしていた昔の僕自身を思い出す。」「僕はある人に言われた。それは愛情の代わりになる何かを満たす行為だと。」それはシルフでグレンに言われた事であった。(第20話参照)悪魔祓いは皆、人間性を捨てる事により強さを得ているのだと思っていたネルは、グレンの事を自分と同じだと言っていた。しかし、グレンは違った。愛する者を失った悲しみと自分の無力さを思い知った為、強さを得たのだ。強さを得て満たそうとしていたのは、あの時のネルだけであった。ネルは与えられなかった愛情の代わりを強さで埋めようとしていた。強くなれば与えられなかった
物心ついた頃から、アルバスの耳には両親が自分の事で喧嘩する声が残っていた。母親は泣きながら父親に向かって。「もう嫌!私にはあの子が何を考えてるのか分からない!」「おい、隣にアルバスが寝てるんだぞ?少し声のトーンを下げて。」「何であんたはそんなにも冷静でいられるの!?元はと言えば、あんたのその煮えくり返らない性格が子供にまで影響でたんでしょ!?」「そ、それは関係ないだろ?」父親は母親を宥めようとするが、母親のヒステリックは止まらない。「だって、言われないと何もしないんだよ?あの子。今日だって、トイレ行きたい筈なのに行きたいとも言わずに漏らして。」「ご飯だって、こっちが言うまで頂きますも言わないし。服も自分で着替えない…全部言わないと動こうとしないんだよ!?」「幾ら何でも、私が全部見張るのは無理よ!このままじゃ、あの子は……。」そう言って母親は机に突っ伏しながら泣きじゃくる。こうなってしまったらもうどうしようも無い為、父親は頭を悩ませていた。布団の中で声が聞こえてきたアルバス。まだ5歳くらいだった為、話を全て理解出来てはいないが、自分の事で両親が喧嘩してるのだと思うと、子供ながらに心を痛めた。「(僕がちゃんと出来ていないから、お母さんとお父さんが仲悪くなるんだ。)」この頃のアルバスは感情を出すのが苦手なだけで、状況に対して心の中で何かを思う事は出来ていた。そして両親が喧嘩しない為に、自分でも何かしようと考えていた。次の日の朝、アルバスは1人で着替えようとタンスの中から服を漁っていた。ーー自分でも着替えられるところをお母さんに見せて、安心させたい。アルバスはそう思いながら、タンスの奥にある服を探す為に顔を突っ込んでいた。ガタガタと音が聞こえてきた為、何事かと思って母親が来た。母親はタンスの中から服を取ろうとしてるアルバスが目に入り、血相を変えながら慌ててアルバスに近づいた。「ちょっと!何してるのよ!!」血相を変えたまま、母親はアルバスに聞いた。「えっと……1人で服を着替えようと……」「何でそんな危ない事するの!?タンスに頭突っ込んで、窒息でもしたらどうするのよ!!」「怖い事しないで!!…もう!何でいつもそうなの!?」アルバスの母親は決して服を1人で着替える事に対して怒っている訳では無い。タンスに頭を突っ込んだ状態の
言われた事を言われた通りするだけ。この世には命令する者と従う者がいて、僕はただ命令に従う者。従って命を葬る者。そこに深い感情なんて無い。どうでも良い。全部どうでも良いから、自分で考える必要が無い。僕は今までそうやって生きてきた。そういう風に育てられてきたから。ギンジと合流したフィナはギンジの代わりに戦っていた。相手は特殊特攻部隊の部隊長、アルバス。アルバスはギンジと戦っていたにも関わらず無傷の状態であった。八握剣(やつかのつるぎ)のメンバーの中で1番強いであろうギンジ。そんな彼がまるで歯が立たないのが見て分かる。その前にアルバスに付いていた特攻部隊の部下10人をギンジが倒していたとしても、その差はあまりにも大きかった。そしてフィナとの戦闘では。「ハァ…ハァ…。」フィナもギンジと同じでアルバスによってボロボロにやられていた。息を切らすフィナに対し、アルバスは全く息を乱していなかった。「まだやりますか?」アルバスは相変わらず無気力な感じで言った。そこには特別面倒臭さや怒ってる様な感情も感じられない、まるで機械を相手にしている様であった。息を切らすフィナは次元刀を強く握りしめ、構えた。「ー 時の断罪を受けよ。時の審判(クロノ・ジャッジメント)!」フィナは詠唱すると、周囲の時間が止まる。陰陽魔術の"陽"の時間を操る力であり、その中でも時間そのものを完全に止める事が出来る魔法。以前シルフでネルに対して使用した事があった。(第16話、18話参照)時間を止める時間が長ければ命を縮めるリスクがある為、それ程長くは時間を止める事が出来ない。だが、ここで出し惜しみすれば命は無いと思ったフィナはその力を使おうと決心したのだ。しかし。「…何で?時間を止めた筈なのに動けるの?」時の断罪(クロノ・ジャッジメント)の中であるにも関わらず、アルバスは白炎を身体に纏いながら普通に動く事が出来ていた。しかもその動きはフィナの縮地法による高速移動を上回り、時が止まった世界を普通に走って移動していた。フィナよりも速く移動するアルバスは一瞬で彼女の目の前に現れ、拳で彼女の鎧を殴った。拳には白炎が纏われていなかったが殴った事により、フィナの鎧はヒビが入りながら砕けてしまう。「グハッ!!」フィナはアルバスの拳の威力により、後方へと吹き飛ばされた。
痛い…痛いよぉ…。もうやめて…お願い。寂しいよ。…私を、1人にしないで!「…はっ!」ロゼアを凍り付かせた瞬間、エミルの頭の中に声が響いてきた。一体誰の声?もしかして…パリィィン!!そう思っていると、目の前のロゼアの方から氷が砕ける音が聞こえてきた。「嘘でしょ?…私が凍らせた氷の拘束を、腕力だけで解いたの!?」ロゼアは無理矢理、力尽くでエミルが凍らせた氷を砕いたのだ。「フゥ!!…フゥー!!…」先程までの狂気じみた笑顔が消え、荒い呼吸をしながらエミルの方を睨みつける。身体をやや前傾させながら両腕をだらんと下げている。睨みつける左目の瞳孔は相変わらず大きく開いていた。「フゥーーー!!!」ロゼアは一瞬にしてその場から消える。カキィィン!!!ロゼアのレイピアと、咄嗟に作ったエミルの氷の刀が衝突した音が鳴り響く。ーー速い!魔力で身体強化してるの?ロゼアはこの戦いの間、ずっと身体強化の魔法は使用していない。使用していたのは固有魔法である[共有(シェア・リンク)]と反(リバース)魔法である[再生(リジェネーション)]。しかし、ロゼアは本来自分の魔法頼りに戦わない。彼女の戦闘スタイル。それは。死なない不死身に近い肉体を持ちながら躊躇なく攻めてくる、特攻物理アタッカー。ほぼ不死身な上にまるでこの自分の命を顧みないこの戦いは、相手からすれば恐怖でしか無かった。「(マズイわ!…さっきまでとは別人の動きをするから、全然死角に入り込めない!このままじゃ…)」身体強化によりロゼアの動きが段違いに速くなり、エミルは彼女の死角に入り込めず正面戦闘が続いた。先程までベラベラと自分の愛憎に塗れた言葉を垂れ流してきたロゼアであるが、今はそんな事は言わず只ひたすらレイピアでエミルを突き刺しに来る。確実にエミルを殺しに掛かっているのだろう。しかし、どこか余裕が無い様にも見えた。「(何か逆転に繋がる道は…けど、彼女に攻撃すれば私にもダメージが…一体、どうすれば?)」「アハハハハ!!!もう終わり?ねぇ、ねぇ、ねぇ!?」優勢になり始めると、ロゼアの狂気じみた笑い声が響き渡る。そして。グサッ!!エミルの胸にロゼアのレイピアが突き刺さる。「アハハ!もう終わりね!」レイピアが突き刺さった瞬間、テンションがハイになっていたロゼアの左目の瞳孔が小さく
そして現在、俺はこの国の危機を守らなければならない!そのために俺が…俺が…!! 「うわぁぁぁぁぁあ!!!!」 カイルが思いっきり剣を振ると黒い根っこは根元から一気に切り落とされ、切られた部分が霧散していった。 多少時間を稼げるが再生を続けるこの黒い根っこは10秒もあれば元どおりの状態に戻れた。 「このままじゃ…このままじゃ…」 諦めるな!カイル! エミルの声が頭の中で蘇った。 「そうだな、よし!俺も本気出さないとな。」 するとカイルの剣が黒く変色し、瞳が黒から赤く変わった。 「一発で止めてやる!」 カイルは縦に思いっきり振ると根元まで一直線に切れていった
グレンの魔力が溜まるまであと2分をきったがカイルにしてみたらこの時間は非常に長く感じた。 腕の筋肉が痙攣しすぎて既に感覚が無くなっていた。 「あともう少しだけ持ち堪えろ、騎士団の団長。あと少しでこの悪夢を終わらせてやるよ。」 「たの…むっ!」 しかし、黒い根っこは時間が経つに連れて再生するスピードを上げてくる為どんどん追い込まれていくのだった。 だめだ…追いつかない! そう思った時、カイルの頭の中で声が聞こえた。 「あんたって、すぐ諦めるよね。なっさけないなー!」 その声は綺麗な声であるが口が悪く少し男勝りな感じがした。 そして頭の中でその声の主を連想させた
「うわぁぁ!もう2人ともなんでこんなに強いのよぉ!」 この2人の衝突に巻き込まれたくないミーナは建物の陰に避難した。 2人は剣を交じり合わせながらお互いを褒めた。 「俺の双剣を直で受け止めた人はもしかしたら君が初めてかもしれないね。」 「お前も、俺の剣を受け止めるとは中々だな。」 「それは光栄だね。じゃあこれはどうかな?」 カイルは一旦グレンから離れると横一直線に2つの剣を振った。 するとグレンのそばにあった建物が斬れて上からぐずれ落ちてきた。 その建物の残骸を刀で真っ二つにし、再びカイルに近づこうとした。 「俺がこんなヤワな攻撃でダメージを与えれるわけない
血だらけの悪魔に対してカイルは1つも攻撃を喰らっていないため、無傷だった。 そして、悪魔はあることを思い出した。 「お…思い出したぞ!お前は、イフリークの守護神だな?」 「……」 カイルは返事を返すことなく、コクっと頷いた。 「まさか、神級魔導師が相手とは。だが、このPDO(プロジェクト・デビル・オペレーター)の俺が負けるなどありえない!」 そしてPDOは地面に手を置くと周りに地割れが起こった。 カイルとミーナはあまりの揺れに体制を崩しそうになった。 「お前の魔法は影だ!その影を無くしてやればお前は何もでき…」 すると悪魔の背後から別の影が発生した。 そ







